突然だが、私はあなたのことをよく知っている。おそらくあなたは、社会人か学生で、仕事か勉強をしていて、雨風をしのげる家があり、お腹が空いたら食事をして、季節に合った服を着て、暖かいベッドで寝ている。こんなのは、誰にでも当てはまることを言っているだけの「バーナム効果」でしかないが、重要なのは、これらを享受できるのは、一体誰のおかげなのか。あなたは、もちろんほぼ全て自分のおかげと思っているだろう。たしかに、持っている知識は自分で学び、仕事の地位は自分で勝ち取り、お金は自分で稼いだのは間違いない。しかし、果たして本当にあなたのおかげなのだろうか。
バングラデシュの人口は約1億6千万人で、日本の人口よりも多い。つまり、あなたは日本よりもバングラデシュで産まれる確率の方が高かった。では、もしあなたがバングラデシュで産まれていたとしたら、あなたは先ほどのものを当然のように享受できただろうか。また、日本で産まれることができたとしても、貧しい家庭で育ったとしたらどうだろう。
今のあなたの成功は、あなたのおかげではない。私は、よい人生の4大要素は、知恵、金、心、注意と言った。しかし、それらを手に入れるためには、あなたがよい国に産まれ、よい家庭で育ち、よい本に出会わなければならない。さらには、手足が自由に動き、慢性的な病に罹らず、不慮の事故に遭ってはならない。そのために必要なものは、もはや「運」しかない。知識も地位も財産も、全てはこの「運」によって決まるのだ。しかし、悲しいかな、運については、大変な誤解をされている。
運は、意思や努力によって操作できると思われている。幸運は誰でも手に入れたいはずだ。おそらく、いらないと言う人なんていないだろう。だから、数珠や、風水や、パワースポットが存在している。しかし、あなたは幸運を呼ぼうとする必要はない。なぜなら、運命は私たちがコントロールできない絶対不可侵領域だからだ。たしかに、幸運や不運は不定期で訪れるが、私たちには幸運を呼ぶことなどできない。どうしてもそう思えないなら、こう考えてみてはどうだろうか。ローマ神話では、「運命の女神・フォルトゥナ」が人々の運命を定めているという。この女神は絶えず「運命の輪」を回していて、輪が回るたびに、人間の最高の時期と最悪の時期が入れ替わるのだそうだ。つまり、私たちの運命は、神の計り知れない能力によって定められるため、それを操作することなど到底できない。
また、自分の運勢を知ることができるとも思われている。この世には自分の運勢を知ろうとする方法がごまんとある。おみくじ、手相、水晶、タロット、占星術、姓名判断。もしあなたが、正月のおみくじを本気で信じていたなら申し訳ない。しかし、先ほども言ったように、人知を超えた能力を知る術は、私たちにはないのだ。
結論。よい人生の本性は「運」である。しかし、この運は私たちにはどうすることもできない。ゆえに、求める必要も、知る必要もない。私たちは、私たちがコントロールできることに注意を向けよう。開運教室に費やす資源を、卓越した知恵、必要最低限のお金、平静な心、見極める注意力に注ごう。
